黒毛和牛
2017年03月
北海道の自然が育てた北はるか和牛〜2日目〜
北海道
グループメンバー | 宮田雪雄/袴田誠二/石川宏 |
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朝、晴れてはいるものの地面はしっかりと凍っていて、すべりそうになりながら宿付近の洞爺湖まで足を運びました。洞爺湖は湖面が青く澄み、中島は湖中に悠然と佇んでまるで絵画のようでした。美しい眺めからエネルギーをもらい、今日は3つの牧場をまわります。
宮田牧場:牛にストレスをかけないために
宮田牧場は雄大な有珠山と昭和新山に囲まれた壮瞥町にあります。宮田さんの牛舎はなんと手作りのログハウス!アットホームな雰囲気の牛舎では時間がゆっくりと流れていくように感じます。宮田さんは牛たちを自由にさせておくことを大切にしていらっしゃいます。粗飼料も食べたいだけ食べさせ、水も飲みたいだけ飲ませています。除角など牛の身体に手を加えることは最低限のことしかしないという宮田さんの考えによって、牛たちはストレスのない生活を送っていました。
口周りについたミルクを舐めあう赤ちゃん牛
宮田牧場:牛たちが穏やかな理由
「生まれてからほとんど注射を打たれたことはありません。でもあまり病気とかはないんですよ。」と宮田さん。宮田さんが健康な牛を育てられる理由は粗飼料へのこだわりにあります。カビが生えていないのは当たり前ですが、青くなく甘いにおいのするものなど宮田さん流の質の見極め方があります。粗飼料が悪いと子牛も若い牛も病気をしてしまいます。常に新しい粗飼料を置いておき、牛たちは自由気ままに食べていく―そうすると、牛たちがいらいらしないんだそうです。こだわりの牛舎は広々とした2頭飼い。牛たちものびのびと過ごしていました。
手作りの牛舎で牛を育てる生産者の宮田さん
幌別牧場:自然放牧で育てる
雪道を移動して登別のインターを降りたところに幌別牧場があります。訪ねると生産者の袴田さんが気さくな笑顔で迎えてくださいました。袴田さんの牧場の特長は自然放牧。牛たちは牛舎と山の中とを好きに行ったり来たりしていて、朝と夜、えさの時間になると自然に牛舎に帰ってくるのだそうです。決められたえさの他に牧草は食べ放題になっているので、あとは自由に寝て、食べて、寝て、食べての繰り返し・・・。なんともうらやましい生活です。外に出ると雪の上で寝ている牛さんたちが!寒くないのでしょうか?実は牛は暑さには弱いけれども、寒さには強い動物なのだそうです。
雪原で思い思いに過ごしている牛たち
幌別牧場:自然の中で生まれ育つ
幌別牧場のもう一つの特長が自然分娩です。自然の中で生まれ自然の中で育つため、たくましく健康な牛に成長します。生まれた子牛もすぐに親から離すのではなく、生後3〜4か月は親と一緒に育てるようにしています。そうすることで大きく元気な牛に育つのだそうです。袴田さんは、牛の健康管理もきっちりされています。「うちは病気を早期発見、早期治療するっていうのにこだわっています。自然放牧ですが自分の目の届く範囲にはいるので、目を配らせてますね。」幌別牧場では牛を自由にさせながら細かく気配りをすることで、牛たちがすくすくと健康に育っています。
牛舎内を案内してくださる生産者の袴田さん
石川牧場:繁殖一貫経営の匠の技
幌別牧場から白老の方に行ったところに、石川さんの牧場があります。“ISHIKAWA FARM”と書かれたかわいいレンガ調の建物が目印です。石川牧場の特長は石川さんが育てた親牛で一貫生産をしているところです。15,6年もの間ずっと外部から牛を入れることをせず、自身の牧場で良い子孫を残し掛け合わせることで、市場でも評価される牛が生まれるようになりました。「自分は繁殖一貫経営でしかできないことを取り組んできて、今の成果に繋がっていると考えています。」そう語る石川さんの姿はまるで職人のようです。育て方に重きをおくのはもちろんですが、石川さんのように良い子孫をつくる育種に力をいれることができるのが一貫生産の魅力です。石川牧場の牛たちはまさに石川さんがつくり上げた輝かしい財産といえます。
子牛は石川牧場の大切な財産
石川牧場:赤ちゃんを育てる苦労
今では立派な牛を育て上げる石川さんも、試行錯誤の時代がありました。「うちもね、昔はすごく病気が多くて、生まれて1種間くらいで下痢をしたり1カ月くらいで風邪をひいたりしていました。子牛って非常に弱いんです。随分治療もしたんですけど、今はワクチンを使って治療よりも予防の方に重点を置いたやり方をやってます。この方法は非常にいいと思います。」一貫生産の最大の苦労は出産です。赤ちゃんはいつ何時に生まれてくるかわからないため深夜など難しい場合もありますが、事故を防ぐために分娩はできるだけ立ち会います。石川さんは「とにかく子牛が大切。」と力説されていました。赤ちゃんの命を守りか弱い子牛を健康に育てていくために、並々ならぬ努力があるのだと体感しました。
真剣なまなざしで牛舎を見て回る生産者の石川さん
2日目の締めは東牧場の焼肉店に!
車を運転し続けること3時間半、3日目の取材先・東牧場のある留萌に到着した取材班。実は、東牧場の東さんは「自分が育てた牛を地元の方にも食べてもらいたい」という思いで、昨年留萌にて焼肉屋さんを開いたんだそうです。平日の夜にも関わらずお客様でにぎわうお店にお邪魔し、自ら店頭に立っている東さんから直接こだわりを聞きながら焼肉をいただきました。美しく入ったサシは甘みがあって口どけが良く、ひとくち噛めば旨味があふれます。極上のお肉をいただいて幸せな気分に浸りながら2日目の取材を終えました。
肉処あずまでいただく焼肉
穏やかな宮田さん、豪快に笑いながら繊細に牛を育てる袴田さん、職人気質の石川さん。個性豊かな生産者の方の話をうかがい、牛の育て方の多様性を学んだ一日でした。最終日、焼肉を食べて元気になった取材班は雪深い留萌での取材に臨みます。