北海道の自然が育てた北はるか和牛〜1日目〜

黒毛和牛

2017年03月

北海道の自然が育てた北はるか和牛〜1日目〜

北海道

グループメンバー 有限会社神内ファーム21/門脇崇

北はるか和牛は北海道で育てられた黒毛和牛。成長した牛に与える濃厚飼料に共通のえさを使うことで、あっさりとした脂肪と甘みが特長の肉に仕上がります。
今回私たちは北はるか和牛がどのように育てられているのかを知るため、洞爺湖周辺から留萌まで6つの牧場に取材に行ってきました。
まだしっかりと雪が積もる3月上旬、2泊3日で訪れた北海道出張を3回に分けてお伝えします。

神内ファーム21:えさの秘密

まず向かったのは洞爺湖町に位置する神内ファーム。ここでは牛にえさをたくさん食べてもらうためにある工夫をしています。
牛のえさは大きく2つに分かれます。1つは粗飼料と呼ばれる牧草などのえさ、もう1つは濃厚飼料と呼ばれるデンプンやタンパク質含量が高いえさです。牛を育てるにはまず粗飼料をしっかりと食べさせることで、体づくりをしなければなりません。
神内ファームではライグラスストローという牧草にきのことみそを混ぜた発酵飼料を加えています。こうしてひと手間かけて、粗飼料を牛が食べやすいようにしているのだそうです。発酵飼料はみそのような良い香りがして、なるほどこれなら食欲も増しそうです。

牛舎内を見てまわる生産者の櫻木さん

神内ファーム21:北海道の地にあこがれて

子供の頃から動物が大好きだったという生産者の櫻木さん。
「今朝はマイナス19度まで冷え込んだから牛さんのひげが凍ってしまって。真っ白になっていてそれはかわいかったんだよ。」
櫻木さんが投げかける牛たちへのまなざしから、一頭一頭の牛たちを本当にかわいがっているのが伝わってきます。「牛ってかわいらしいやん。正直だしね。」
毎日小さい頃から牛を見ていたという櫻木さんは牛の表情が見分けられると言います。
櫻木さんは九州・宮崎県というこれもまた牛の産地の出身でありながら、北海道の大草原で牛を育てるのが夢だったんだそうです。
「昔北海道に一度訪れた際、土地が広く空気も水もきれいなのがとても印象的だったんですよ。いつかここで牛を育ててみたいとずっと思ってたから、今とてもうれしいです。」
北海道の自然豊かな大地で、たっぷりの愛を注がれて育てられた牛たちに見送られ、次の牧場へと向かいます。

子牛はカメラに興味津々です

門脇牧場:一貫生産の魅力

肉牛を育てる場合に子牛を得る方法は2つあり、多くの生産者は市場から子牛を買いますが、自身の農場で親牛を飼い赤ちゃんを産み育てる生産者もいます。これを一貫生産と言い、出産に関する苦労は増えますが、牛たちの一生に寄り添い大切に育てることができます。
門脇さんは一貫生産をしている生産者です。
「一貫生産は牛のそれぞれのステージで注意しなければならないことがあります。その注意しなくてはいけないことを常に見ていくっていうのが醍醐味じゃないですかね。」
とにかく親牛を一頭一頭管理することに気を付けているという門脇さん。えさも一頭ずつ与えるなど、個々の牛に向き合ってコンディションを整えることに尽力しています。

門脇牧場で生まれた赤ちゃん牛

門脇牧場:とっておきの牧草

門脇さんの牧場では、粗飼料は輸入の牧草ではなく自家産の牧草を使用しているのが自慢です。
「牧草はこの近くでとれたものになります。春に種をまいて、6月下旬くらいから収穫をはじめて、それが一番牧草。お盆前にもう一度肥料をまいて、8月の下旬から二番牧草として収穫します。9月からは自分のところで出た堆肥を採草地にまくんです。」
豊かな牧草地は北海道農業の魅力のひとつです。牧草の栄養価は収穫時期によって変わるため、栄養の高いものを子牛に与えるなど、どの牛にどの牧草を与えるかを考えながら決めていきます。

「そうかあ、おいしいかあ」と言って餌を与えていく生産者の門脇さん

門脇牧場:牛を育てるむずかしさ

門脇さんは一頭一頭牛に話しかけながらえさをあげていきます。牛と自然と話をしているから楽しいと語る門脇さんにも、飼育がうまくいかない時代があったそうです。
「牧場を始めた頃、飼料会社の方にお前のところの牛は落ち着きないなって言われたんです。とにかく牛が神経質になっていて。僕の性格が全部牛たちにも伝わっていたんでしょうね。」
そこから牛たちにも穏やかに接するように努め、今では自信を持って牛を育てています。
この日も、門脇牧場の牛たちは穏やかな様子で過ごしていました。

牧場内を案内してくれた愛犬のローディーくん

寒さと闘いながら1日目の撮影を無事に終えた取材班。
櫻木さんも門脇さんも牛たちに話しかけながら愛をもって育てている姿が印象的でした。
赤ちゃん牛から30か月の大きな牛までを見せていただきましたが、どの牛もとても愛らしかったです。
「大切に育てた牛だから大切に召し上がってほしい」と櫻木さんはおっしゃっていました。
食べ物を食べることは生産者の方からの思いのバトンを受け取り、命をいただくこと―そう感じた一日でした。

北海道の自然が育てた北はるか和牛〜1日目〜