土地本来の力と生産者の努力が生んだ自慢の生姜

生姜

2016年11月

土地本来の力と生産者の努力が生んだ自慢の生姜

高知県

グループ名 和田泰明さんグループ
グループメンバー 山本誠二 、 箭野順一 、 藤田慶介

高知県高岡郡越知町の、日本トップの水質に選ばれた仁淀川と、山々に囲まれた土地に「箭野(やの)さんの生姜の畑」があります。お伺いした11月初旬は収穫の最盛期。胸の高さほどの、笹の様な葉が生い茂っており、生姜の香りに包まれながらのインタビューとなりました。

〜収穫は年1度!10月半ば〜11月が勝負です〜

訪問日は天気も良く、収穫最盛期でたくさんの方々が作業されていました。この時期、4月に植えた親芋(種生姜のこと)が7ケ月かけて成長し、いよいよ10月20日前後から収穫を開始した時期でした。この地域に霜が降りる11月中旬までに全て収穫を行います。というのも霜が降りると葉が枯れ、低温は生姜自体を傷める原因になるためです。

今年は収穫時期に雨が多く、苦戦しているそうです。

〜収穫は全て手作業が箭野さん流〜

機械収穫も可能だそうで、実際この日もお隣の別の方の畑では機械収穫を行っていました。
機械の収穫は茎が土の中に残ってしまい、来年作の土作りの際、重作業・病気の原因になる可能性が増してしまうからだそうです。

人手が多く必要となりますが、変わらずに手収穫を続けています。

〜掘りたて生姜は色鮮やか〜

収穫後、茎と根を切り落とし、コンテナに詰めていきます。堀たての生姜は、店頭で手に取る生姜からは想像できないほど、たくさんの実の塊です。茎境は鮮やかなピンク色で、皮目も白くみずみずしさが感じられます。ふっくらと丸みをおびた形が美味しく育った証。生姜独特の辛みと香りがたまらなくいいそうです。

一つの種生姜からここまで大きくなります。このまとまりを「蔵」といいうそうです。

〜水はけの良い圃場にするための、手間は惜しまない〜

生姜は水はけの悪い畑では育ちません。 黒土や水田跡地などの、雨が降った後に水たまりができる畑は生姜栽培には不向きなのです。こちらの地区は圃場に微妙な傾斜がついていて、砂壌土なので生姜栽培に適しています。ただ、畑を耕しうね作りをする際、くぼみがない完璧な畑を一度で作り上げることは不可能です。そこで、種植えを開始するまでの期間、雨が降るたび圃場にいき、くぼみがあれば埋めて平らにする作業を繰り返しおこないます。水が貯まることなく、畑の外に流れ出る斜面を作り上げることが、生姜作りで一番気合いが入るところだそうです。

生姜畑のうねは、幅が広いのが特徴です。

〜先代が残してくれた誇れる財産〜

砂壌土は水はけが良いのですが、乾燥しやすいという弱点があります。乾燥は茎の成長を遅らせ、葉がしおれる原因となります。この問題を解消するべく、先代たちで組合を作り、近くを流れる、仁淀川の伏流水汲み上げ用の蛇口設置に踏み出しました。結果、仁淀川の水質を活かした,上質な水を常に散布できるようになり、水はけの良い土地柄も相まって、生姜作りにさらに最適な土地となりました。

地区一帯に蛇口が取り付けられています。

〜生姜は貯蔵して美味しくなる!〜

畑で収穫された生姜は、コンテナに詰められ、14℃前後の環境を維持した、貯蔵庫で45日程寝かせます。つまり先程収穫されていた生姜たちが私たちの手元に届くのに、最短でも、1ケ月月半以上かかります!貯蔵期間中に、茎部分は溶け、乾燥し、全体が飴色に変色していきます。ここまできてやっと、私たちがスーパーでみる生姜に!この貯蔵庫の中のもので、1年間順次出荷していきます。

収穫期終了後はこの貯蔵庫がいっぱいになるそうです。

生姜は病気に弱い作物です。どの様な病気があるか具体的な話をお聞きすると、驚くことがありました。それは、箭野さんが生姜栽培を始めた当初と、現在では罹る病気の種類が増えたということです。生姜は常に、数種類保菌していますが、その菌が、温暖化の環境変化により発病し始めたそうです。毎年研究し、改良をしていく栽培技術ですが、新たな病気や不安定な天候が原因で、何度も頭をかかえるとのことでした。一つの株から病気がでると、数日で辺り一帯に広がるため、見つけ次第取り除く必要があります。温暖化が引き起こすのは天候不順だけでなく、作物自体の状態をも変えてしまうものなのだと知りました。

土地本来の力と生産者の努力が生んだ自慢の生姜