アスパラガス
2014年05月
田んぼ生まれのアスパラガス!
山形県
グループ名 | 戸田美喜男さんグループ |
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グループメンバー | 加藤慶一 、 戸田美喜男 、 市川幹郎 、 小口伸一 、 小口正志 、 石田稔行 、 長谷川 孝 、 木村義弘 、 鈴木秀人 、 舩山マサエ |
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山形県南部、置賜盆地の北端にある置賜郡白鷹町。中央を流れる最上川、その川沿いに豊かな田園地帯が広がる自然豊かな地域です。今回は、この土地でアスパラガスを栽培する小口伸一さんの畑にお邪魔しました。
田んぼからアスパラガス畑へ
小口さんの畑は田んぼに囲まれ、蛙の鳴き声が聞こえる、のどかな場所にありました。 「周りが全部この(田んぼ)まんまの状態で、国の政策で、休耕しなくちゃいけない畑があって。減反ですね。それで、米から切り替えてアスパラ畑にしたんです。」 と、小口さんは言います。小口さんはアスパラガスを栽培されて10年になるそうですが、この畑も昔は米を作っていたんですね。 この、「田んぼでアスパラガスを作る」ということに、最初は苦労されたそうです。 「水は必要なんだけど、あんまりありすぎてもやっぱり。最初の植えつけた頃は、田んぼで作るっていうのは、根腐れが出てしまうのがちょっと苦労した。畑と違って、水分を余計持ってるもんだから、排水に苦労したって感じかな。」 水をたくさん持った畑、どうやって排水しているのでしょうか。 「この畝を立てて、水を排水溝に流す、ということをするといいのかなぁっていうのでしたんだけど。本当はここ平らでもいいんですけど、このへんはどうしても排水が悪いとダメだなって感じ。」
小口さんのアスパラガス畑です。アスパラガスが植わっている部分は、畝を立てて高くしてあります。
また、一般的に土に入れると良いとされる堆肥も、小口さんの畑とはあまり相性が良くないのだそうです。 「前は入れたりしたんだけど、あんまり入れすぎると今度、根腐れしたことがあったから、軽く入れるようにしてる。堆肥入ってればすごいアスパラになるのかな〜って思ったりもしたけど、それだけじゃ逆効果になることもあるみたいだね。」 勉強会などで、この肥料を入れるといい、といった話も聞く機会があるそうですが、それだけでは上手に栽培するのは難しいのだそうです。土地柄も、気象条件も、考えなければいけないことはたくさんあります。 「いや、わかんないことばっかりだね。これは絶対こうだなんて俺まだ言えないよな。」 と小口さんは言います。苦労されている様子がうかがえますね・・・。
アスパラガスの生産者、小口伸一さんです。
アスパラガスの敵
しっかりと真っ直ぐ伸びたきれいなアスパラガス。このアスパラガスは、さまざまな障害を乗り越えています。 「もし石なんかでもあると、穂先が曲がるんです。気温が低かったりするとゆっくりしか上がってこないので、(土から)出てくると(上にある)石が邪魔して曲がってく。気温が高かったら(アスパラガスが)ぐっと上がってくるけど、そうするとあんまり傷にもなんない。」 と話しながら、収穫する小口さん。収穫しながらも、ちょこちょこある小石を脇へよけていました。 アスパラガスは20度ぐらいまで気温が上がらないと伸びてこないのだそうです。10〜15度くらいまで夜の温度が下がってしまうと伸びず、傷がつきやすい。 ただ、夏場はまた別だそうです。 「夏は、気温が30度くらいになってしまうと、穂先の開きが早くなってしまう。」 穂先の開いたアスパラガスは、商品としての規格が低くなってしまうそうです。 さらに、 「てんとう虫が結構穂先食べます。あと今モンシロチョウも飛んでるし。アオムシも卵を産みつける。」 アスパラガス栽培には敵が多いんですね。こうして、傷つかず、曲がらず、穂先が開かず、虫にも食べられなかったアスパラガスが良い商品としてお店に並ぶのだそうです・・・。
小口さんの畑で、アスパラガスがまっすぐ育っていました。
美味しいのにもったいない・・・
「でも、食べられます。」 と、小口さんは話します。生産者として、知ってもらいたいことがあります。 「食べても全然、変わらないですよ、味は。穂先が開いたから食べられないとか、硬くて食べにくいとかはなってない。十分食べられますよ。見た目で、これ絶対違うアスパラじゃないか、ってことではないです。ただ規格があるので、それで(規格が)下げられると自分でも辛いところです。」 さらに、虫がかじったと思われるアスパラガスがありました。 「あーこれてんとう虫にやられてる。ちょっとこのへんくちゃくちゃってなってる。まぁでもこのまま食べられますよ。虫が食べてるんですから。俺たちは食ってますよ。美味しい美味しい。かえって『いいもの』より美味しい。どっちが美味しいかなんてわからないよね。」 きれいな野菜=美味しい野菜、では必ずしもないんですね。どうしても、見た目できれいなもの以外は敬遠してしまいがちです。 「お金を出して食べる人は『こんなもの食えませんよ』って言われるけどね。もったいないよね、うちらからすると。ちょっとしたとこなんだけどね。まぁ、そういうのばっかり売って しまってもダメなのかもしれないけど。」 一概には言えませんが、一般に「良い」と言われないものでも美味しいこともあり、そして、一般に「良くない」と言われているものがかえって美味しいこともある。それを生産者は知っています。 見た目だけで美味しさを判断したら「もったいない」!穂が開いても、虫が少しかじっても、アスパラガスは美味しい! もちろん、生産者の方は見た目もきれいなアスパラガスを作るようにしています。「もったいない」アスパラガスを見る機会は稀ですが、ぜひ知っておきたいお話です。
小口さんの畑で収穫されたアスパラガスたち。これから選別されて、出荷されていきます。
小口さん大忙し!ぜひ、お手伝いに。
「今一番忙しい時期です。6月いっぱいぐらいは。」 と、小口さん。 「(今の時期は)作業がないってことはないですよ。アスパラガスは収穫朝晩2時間ずつかかります。朝とって、そのあとは果樹の作業もやらなくちゃなんないです、夕方の(アスパラガスの)収穫前に。日中やってるのは、ラ・フランスの作業。そのほかまだ、田植えもしなきゃなんない。」 アスパラガスの収獲のあとは選別作業もあります。そして、小口さんはなんと、りんごも栽培しているそうです。 ところで、取材班は、 「やってみます?結構面白いですよ。」 の小口さんの一言から、収穫を体験させていただきました。小口さんのはさみをお借りして、サクッ、サクッと収穫。特に太いアスパラガスは「バチン!」と、かなりしっかりした手ごたえ。こんな風に太いアスパラガスがたくさんとれたら最高だよ、と小口さんも話します。 「収穫おもしろいでしょ?こんな風に来てもらって、収穫やってみるといいよね。」 さらに、やってみるとわかるのが、かなり体力を使うこと。汗もかきますし、かなり腰にくる作業です。 収獲はおもしろくて、体力もつき、 忙しい生産者も喜ぶアスパラガス収穫のお手伝い。これはおすすめしたいです。
収獲作業は、この体勢の繰り返し。「体にはいいよ」と小口さん。
「小口さんのアスパラガス」が、美味しい!
小口さんは「顔が見える野菜。」に取り組んでから、こんなことがあったそうです。 「おじさんが東京にいるんですけど、この間、うちで出したやつ(アスパラガス)、買って食べたそうで。一昨日かな、うちに来ていたんですけど、『お前のアスパラ食べたよ』って。だからアスパラガスをお土産に1kgぐらい、渡しました。喜んで帰っていってくれました。2・3年前も、うちのアスパラ食べることないんかって言ったら『食べた食べた』って言われて。それはやっぱり良かったなぁ〜って。」 親戚の方は、地域と名前から小口さんのアスパラガスがわかったのだそうです。 「うまくなかったというのはないといいんだけど、うまかったって言われたら、それはいいことだね。」 と小口さん。 遠く離れていても、買った方が作った方にたどり着くことができる、というのは「顔が見える野菜。」ならではですね! 最後に、消費者の方にメッセージをお願いします! 「アスパラ作って10年やってます。なかなか大変ですけど、消費者のみなさんに食べていただくために作ってますんで、どうか味見して買ってやってください。」
カメラを向けると「いや緊張するな〜」と話す小口さん。働く生産者のたくましいお姿です!
小口さんが毎日朝晩収穫しているアスパラガスが、お店に届けられます。お店に並ぶ小口さんのアスパラガスから、そこに込められた苦労や想いを是非感じ取ってもらえたらと思います。そして、お店で見かけたら、手に取って、美味しくお召し上がりください!