大根
2014年01月
80点を目指して、一生懸命仕事をする。
神奈川県
グループ名 | 石田憲広さんグループ |
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グループメンバー | 嘉山雄作 、 三冨和浩 、 石田憲広 、 川名和久 |
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今回訪れたのは、神奈川県南東部、相模湾と東京湾に面する三浦半島。海に囲まれたこの土地で大根を栽培されている、三冨和浩さんにお会いしてきました。
海に囲まれたあたたかさ
この日は朝から収穫作業を見学させていただく予定でしたが、寒さで畑が凍ってしまっていたため、朝の収穫は中止。 それでも数時間待つと、暖かくなり、午前中には収穫再開できる状態になりました。 「ここに住んでるとわかりづらいんですが、ちょっと神奈川から離れると、緑が青々として冬に農業ができるのは三浦半島独特なんだとわかります。山のほうと違って、やっぱり海に囲まれた暖かさがあるんですね。ですから、畑が凍ってもこういう風に解けて、ちゃんと収穫できますし、そのへんは三浦の特徴であり、ありがたいところですね。」 と、三冨さん。 この日はすっきりと晴れていて、太陽が当たって畑も随分明るく見えました。大根は、海と、この太陽の恵みを受けて元気に育つんですね。
三冨さんの畑です。 気温も上がり、天気もきれいに晴れました。
思い通りにはならない
恵まれた環境。でも、三冨さんはこうも話します。 「あんまり、なんでもかんでも自分の思い通りにはならないです。毎年、気候が違ったりするので、毎年同じことやっても同じ風に作るのが難しいんです。」 思い通りにならない難しさ。そんな中、三冨さんはこんなことを心がけているそうです。 「去年のことを思い浮かべながら、だいたい80点くらいを目指してやってます。自分でコントロールしきれない、残りの部分は大根そのものの力に任せます。そういう意味での80点ですね。」 80点を目指すために、どんなことをするのでしょうか。 「例えば、長期(天気)予報で今年は暖冬ですよって話があれば、肥料を控えようかなって控えるじゃないですか。そうすると予報が当らないこともあって、大根が肥料切れを起こして、そうなるともう間に合わないんです。逆のパターンもあります。今年は寒いって言われてて、肥料を余計に施すと育ちすぎて、一般的 に求められるサイズより大きいものばっかりになっちゃったり、そういうことも多々あります。ですから、肥料を極端に施したり減らしたりしないようにしています。」 さらに、こんなことにも注意が必要だそうです。 「その畑があったかいか冷たいかも関係します。向こう側の山とこっち側の山では、温度が全然違うんですよ。この畑は低くて、この先、海のほうに空気が動かないところがあって、そこはもっと低い。ほんのこの辺りだけでも1度、2度ぐらいの差はあるので、それでもう凍る、凍らない、の差が出ます。同じ地域でも(温度が)違うので、品種もそれに合わせて変えたり、種をまく時期を工夫しないと同じ風には取れないです。」 毎年気候が変わる中、同じような大根を作るのは、それだけでとても難しいんですね・・・。
台車に積んだ大根をトラックまで運ぶ三冨さん。 トラックの荷台がいっぱいになるまで、何往復もします。
80点を目指すこと
ところで、「80点」という目標は、一見物足りないように思えます。 三冨さんは、どう考えてらっしゃるのでしょうか? 「本当はもっと高得点狙ってるんですよ。でも、大根そのものが持ってる力って限界があると思うので、自分たちがコントロールして、例えば収量を増やそうと思ってやりたくても、大根そのものにそれに対応する力がないんですよね。だからそういうところは無理しないで、気候が変わってもなるべくいつもどおりで済むような栽培方法が理想的です。」 一時は、大根をたくさん取ろうとして大根が病気にかかって全然収穫できない、といった大きな失敗をすることもあったそうです。 コント ロールできない部分に無理に手を出すと、大根にとってかえって良くない、ということもあるんですね。 「どんなにうまくいっても80点って思わないと、逆に80点も取れないんですよ。」
なかなかうまくいかないからこそ、狙った通りにできた時は、「やったな」と思うのだそうです。
鮮度のいいものを
「なるたけ鮮度ですよね。鮮度のいいものを。」 三冨さんの心がけは、こんなところにも表れています。 「新しいうちに出荷、新しいものを。取ったものをさらに、すぐ出せるようにしています。たぶん去年よりは1日もしくは半日くらい、半日以上は早く出荷してると思います。運送屋さんにも頼んで、流通のどこかで寝ることがないようにしているので、出荷してるほうから見ればたぶんこんなに新しいものはないんじゃないかなとは思います。」 1日でも早くお店に大根をお届けする。これは消費者にも嬉しいですね! 「煮て違いがわかったんですけど、新しいものは本当に早く煮えるんですね。それに、新しいものは長く美味しく食べられるので、そのへんで差をつけられないかなって思ってます。」
午前中に収穫された大根は、午後一番に洗われ、ピッカピカになります。
一生懸命、仕事をする
手慣れた様子で、大根を運ぶ三冨さん。 畑で作業をする姿だけを見ると、淡々とやっているようにも見えましたが・・・ 「毎日の作業って、同じことの繰り返しで単調に見えるんですけど、多分見た目以上に本人は結構必死にやってます。」 と語る三冨さん。 「頭の中ではとにかく一生懸命です。何の仕事でもそうですけど、あんまり中間ってないような気がするんですよ。要は、一生懸命やらないと、食べていけないですよね。何でもそうですが、適当にとか、そういうのってないような気がします。だからとにかく、何やるにしても一生懸命ですね。」 一生懸命考えるからこその、80点を目指す心がけや、鮮度へのこだわりなんですね。
お休みの日は、気のいい仲間とオートバイでツーリングに行くのが趣味、という三冨さん。三冨さん、ありがとうございました!
気候をはじめ、変わりやすい条件を抱えながら、毎年同じことを同じようにやっているように見せる。それがとても大変なことだというのは、なかなか伝わらない部分のように思います。お店で並ぶ大根を見かけたら、是非、そういった生産者の懸命な取り組みを感じていただきたいと思います!