ひとつひとつ個性のあるみかんの味を楽しんで。

みかん

2020年10月

ひとつひとつ個性のあるみかんの味を楽しんで。

熊本県

グループ名 中村 巧さんグループ
グループメンバー 井澤以智夫 、 原田一吉 、 坂口高士 、 坂口清治 、 松村朋哉 、 中村 巧 、 中島潮美 、 福島成治 、 堀尾大知 、 濱口博文

正面に海を臨む緩やかな山並、山肌をみかんの黄色が鮮やかに彩ります。私たちは熊本県宇土市、中村巧さんの圃場に伺いました。海風に乗ってほのかに薫るみかんの香りが、取材チームの鼻腔をくすぐります。

〜良い土地であることが美味しさの絶対条件。〜

陽の当たる山の斜面に沿って石垣が組まれ、みかんの木が植えられています。このみかん畑は中村さんがお父様から引き継いだもので、中村さんは高校を卒業した後から45年、この土地でみかんを育て続けてきたということです。
みかん栽培のポイントをうかがうと、「(私たちは)自然に勝つことはできない。あらゆる工夫をするよりも、みかんに適した土地を選ぶのが一番。ここは南向きで水はけも良い。みかん栽培にぴったりの恵まれた土地を開墾してくれた、父親に感謝です。」と笑ってらっしゃいました。
また、みかん畑の一角には家庭用に里芋を作って楽しんでいるとのこと。中村さんがこの土地を大事にしてらっしゃることが伝わってきました。

石垣は中村さんがお父様と2人で組み上げたものだそうです

〜約600本の木の数だけある、みかんの個性。〜

「ここには600本ものみかんの木があるのですが、同じ木など一本もないのです。」と中村さんは言います。中村さんのみかん畑には、10年未満の若い木から55年以上の老木まで異なる年齢の木がありますが、木のコンディションも日々変化しているため、本当に同じ状態の木は一本も無いということです。
そして、みかんの味は木によって変わってくるため、ある木から採れたみかんと隣の木でとれたみかんでは味わいが異なってくるといいます。「ですから、この600本の中で今はどの木のみかんが美味しいのか、すべて頭に入っているんですよ。」と中村さんは続けます。糖度センサーでは糖度という点で均一であっても、センサーでは測れない食味の違いがあるといいます。みかんの味には個性があっては均一ではないことは驚きでしたが、とても魅力を感じました。これからは今日のみかんは前回よりも味のコクが強いなぁ……などと楽しみたいものです。もしかしたらそのみかんは、600本の中で一番美味しい木になったラッキーみかんなのかもしれません。「ぜひみかんの食味の違いも楽しんでほしい。」と笑顔の中村さん。

太陽を浴びて輝く、中村さんのみかん

〜再来年を見すえて、今年のみかんを作る。〜

収穫作業を見学させていただきました。脚立に腰掛け、手慣れた手つきで、しかしみかんを傷つけないよう一つ一つ丁寧に枝から切り落としてはテンポ良く収穫していく中村さん。腰から掛けた鞄がみかんで一杯になると、地面に置いたケースに移します。一日どの程度収穫するのですか、と尋ねたところ、「このケースで35杯くらいかな。ケースには20kg入る。」との返答に、思わず「700?!?」と声をそろえて驚く取材チームでした。
また、みかんの木には果実がなっていない枝があり、これらは来年みかんがなる枝になるそうです。そして今果実がなっている木は再来年に実をつけるように管理しているということです。「剪定や摘果は、みかん栽培において大事な作業ですが、いつも再来年のことまで考えながら行っているのですよ。」と教えていただきました。なるほど、木になった果実をすべて収穫するのではなく、毎年安定して収穫できるように工夫されているのですね〜。勉強になりました。

テキパキとみかんを収穫する様子

「丹精込めて作っていますので、美味しく食べていただければ私も幸せです。」と語る中村さん。
撮影時に取材チームが逆光に苦労していると、写真が撮りやすいように体の向きを変えたり移動してくださり、と優しい中村さん。なんと高校時代は写真部だったとのこと!恐れ入ります。陽の当たるみかん畑も、中村さんご自身のお人柄も、ぽかぽか温かくて幸せな気持ちになった出張でした。

ひとつひとつ個性のあるみかんの味を楽しんで。