漁師が認めるぶりを目指して

ぶり

2013年09月

漁師が認めるぶりを目指して

熊本県

グループメンバー 平山千一

今回訪れたのは、熊本県天草市。東シナ海の外海・天草灘でぶりの養殖に取組む平山さんを訪問しました。

天草の美しい海に浮かぶ生簀

晴天に恵まれた視察の日。船に乗り込み、穏やかな海を進んでいきます。
波に揺られて進むこと10分近く。ぶりの生簀が見えてきました。
生簀を覗くと、元気に円を描くように泳いでいるぶりの影が見えます。
今年も大きく育っているようです。

外界に面した沖合いに生簀があります。

試行錯誤の末に辿りついた飼料

「飼料はオリジナルのものを使っているんです」
船には飼料が積まれていました。見ると、ドッグフードのような固形の飼料。これはEP飼料と呼ばれる高温高圧加工されている飼料です。品質が安定するため個体差が少なく、必要な栄養分を与えることができます。
「おいしいぶりを育てるには、与える飼料が大事なんですよ。飼料会社を一つにしぼり、密に連携をとっています。そうすることで、品質にぶれが出ませんし、飼料の向上に努めることができます。このEP飼料は、育てているぶりに対して何が足りなかったのか毎年考え、試行錯誤の末に辿りついた飼料なんです」
ちなみに、このEP飼料は人間も食べられるそうです。

平山さんのオリジナルEP飼料です

危機を乗り越え、生まれた自信

「イトーヨーカドーさんのプライベートブランドである、『顔が見えるお魚。』シリーズとして、恥じない生産者となりたい。そう思います」
こだわりをもってぶり養殖をすることに対して、平山さんはそう語ってくれました。
「実は数十年前に会社経営が危なくなり、どん底の経験をしたことがあります。そのときに、大量生産型のぶり養殖を行なうか、こだわりをもったぶり養殖を行なうか、社内で検討し、大方針を立てました。
『漁師がおいしいと認めるものをつくる』、『お客様に安心して食べていただけるよう、ごまかしのない、トレースを追えるものをつくる』というものです。
その方針はいまでもぶれていませんし、自信を持ってお客様にお届けできるぶりを養殖しているのだと、自負しています。」

ストレスの少ない健康なぶり

給餌作業を見せていただきました。
大砲のような筒から、EP飼料が、次々と生簀に投げ込まれていきます。飼料が入るとすぐに、ばしゃばしゃばしゃと大きな音が! 水しぶきで水面が白く波立ちます。
「ぶりの食べる様子で、ぶりの体調がわかるんですよ。体調があまりよくないかなと感じたら、飼料の量を調整したり、飼料を変更して対応しています」
与える飼料で健康管理ができるんですね。
「飼料というものは、ただ与えればいいというものではないんです。生簀ごとに管理を行い、飼料の見直しを1週間単位で行なっています。日々変わる海水温で、ぶりの飼料消化力も変わります。ぶりにストレスがかからないよう、調整しているんです」
ストレスですか?
「飼料を食べて吸収するのに、ぶりにはストレスがかかります。たとえば、給餌時間もぶりのストレスと関係しています。午前中に給餌をしたほうが、日中の酸素量が多いときに消化ができ、ぶりのストレスを軽減で きるんです」
他にも、生簀1台に対するぶりの尾数を少なくすることで、ぶりがゆっくりと泳げる環境づくりを行なっているそうです。
野菜と違い、ぶりの養殖には2年ほどかかります。育てる時間が長いなか、いかに健康なぶりを育てるか。
ぶりに対する愛情と、ぶり養殖に対する熱意を感じました。

白く波立つ水面。迫力があります。

平山さん直伝! ぶりのおいしい食べ方

船を降りて待っていたのは、おいしそうなぶり料理。
特におすすめとしていたのが、『ぶりのたたき』。
刺身で食べるのももちろんおいしいのですが、たたきにしてポン酢で食べるとまた違った味わい。「おいしい!」と次々とお皿に手が伸びます。
このたたき、実はすぐ作れる簡単レシピだそうです。作り方は、焼いて、冷やして、切るだけ。まず、ぶりのさくの各面を、約15秒ほど表面が白っぽくなるまでフライパンで熱します。すぐに氷水で冷やしたあと、水分を拭き取ります。最後に、スライスをして盛り付ければ、もう完成です。
平山さん直伝のおいしい食べ方。ぜひ、試してみてください!

ぶりのたたき。大好評でした!

平山さんのぶり。産地では日々生簀に通い、元気で健康なぶりを育てています。
平山さんの熱い想いや天草市の自然とともに、ぜひご賞味ください!

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